今回もコインランドリーを使用した羽毛ふとんの丸洗いについてお話します。

コインランドリーでは様々なものが簡単に洗濯、乾燥ができ、羽毛ふとんも洗濯可能と記載されています。確かにコインランドリーで洗えれば気軽に、お得にお手入れすることができますよね。

当社ではコインランドリーで洗った羽毛ふとんをお預りすることがあるのですが、確認してみると十分に乾いてない、少し湿った状態のままのふとんがあります。
また、コインランドリーで洗濯に失敗してしまったことが原因でリフォームを出される方も…
多くの方がコインランドリーで羽毛ふとんを洗っているかと思いますが、洗うとどのようになるのでしょうか。

そこで、数年前に行ったコインランドリー実験レポートを載せます!

コインランドリー実験レポート

今回コインランドリーで洗ったのは、押し入れに入れっぱなしだったお客様用羽毛ふとん(複数回使用)のAと、「洗濯機使用可」の表示のある羽毛ふとん(未使用)Bの2枚。


 
Aのふとん    Bのふとん
         生地:綿100% 
         中身:ホワイトグース93% 1.4㎏入り   
         洗濯表示:洗濯不可 
         お客様用として使用していた。
         押し入れに入れっぱなし。
         生地:TTC
         中身:ホワイトダック85% 1.3㎏入り 
         洗濯表示:洗濯可能
         未使用だが、押し入れに入れっぱなし。

まずは2枚のふとんの元々のカサ高と重さを計測。どちらも長年干さずにいたためか、少し湿気でへたっているように見えます…。カサ高はAのふとんは約35cm、Bのふとんは約27cmでした。
次に、元の羽毛の重さを計測。



A、Bのふとんは、中身の詰め物の重量がA:1.4㎏、B:1.3㎏でした。今回計測した重さは中身の重量+側生地の重量です。

次に、中身の羽毛の確認です。



Aのふとんは、使用していたことと、長い間湿気の多い押入れに収納していたということだけあって羽毛が固まり、ピリングが少し目立っています。ファイバー化はそれほど進んでいないため、総合的なランクは【Cランク】と診断しました。

Bのふとんは、未使用ですが袋に入れっぱなしだったということもあり、羽毛の固まり・ピリングが確認できました。また、透明ケースに羽毛を入れ振ってみると若干ファイバーが舞っていたため、総合的なランクは【Cランク】と診断しました。

AとBそれぞれのふとんの状態を確認したところで、コインランドリーへ!


羽毛ふとんを洗濯機で洗う!

● 行った洗濯の流れ ●



①今回は中型洗濯機を使用しました。洗濯30分で1,100円でした。2枚洗ったので1枚550円と、かなり安いですね!

”ふとんにヒモを巻くと崩れなくて良い”という情報もありますが、締め付けるのは中身に良くないのと、ヒモの部分が乾かない可能性があると判断したので今回は何も巻かずに洗濯機に入れました。

②スタートボタンを押すと扉がロックされ、徐々に水が入ってきます。よく見ると泡が立ち、しっかりと『洗濯』されていることが分かりました。洗い終えるとすすぎ、脱水が行われます。

③そして待つこと30分、洗濯が出来上がりました。早速中を開けてふとんを確認してみると…羽毛が水分を含み、さらに脱水されているためかなりぺちゃんこで小さくなってドラム缶に張り付ていました…!ここまで小さくなると元に戻るのか不安です…。


乾燥機で乾かす

洗濯後、隣に設備されている中型の乾燥機にA、B一枚ずつふとんを入れてまずは40分乾燥機をかけました。かなりふとんが小さくなってしまいましたが元のように膨らむのでしょうか?



乾燥10分後:Aはまだ水分を含んで重たいように見える。Bは生地が軽いためか空気をよく含んでいるように見える。

さらに30分後:A・Bともに乾燥してきてだんだん膨らんできていることが分かります。



乾燥40分後:A・B共に乾燥機を使用したことで膨らみは増したが、生地はまだ湿気ているように感じます。




さらに16分後:まだ湿っていたため、中型から大型乾燥機に移し、さらに16分乾燥させました。合計56分!乾燥終了です!見た目は乾いているように感じますが…


 
Aのふとん Bのふとん
・生地の外側は乾いているが内側は濡れている
・中身がほぼ濡れている
・乾燥がまだまだ不十分
・生地は乾いているが内側は少し湿気ている
・中身はまだ湿気ている
・Aよりも乾燥できている


洗ってみた感想ですが、まずは『安く洗濯ができること』です。洗濯機は30分1,100円、乾燥機は中型で40分、大型で16分の合計56分使用して2枚で1,200円。洗濯と乾燥合わせて2,300円なので、1枚当たり1,150円で洗濯ができました!また、生地表面がさっぱりとしていて気持ちよさそうな洗いあがりになりました。

ただ、恐らく乾燥機でふとんを回していたことが原因と考えられますが、ふとんの真ん中のマスの羽毛が端のマスへ移動してしまっていました。体に最も面している真ん中の羽毛が少なくなると、暖かさを感じなくなりますので羽毛ふとんの良さが減ってしまいます…。
 

羽毛ふとん持ち帰り後

持ち帰ってふとんのカサがどのくらいになっているのか調べてみました。A・B2枚とも洗濯前よりもカサがなくなっていますが、Aはかなり違います。恐らくまだ乾燥が不十分で中身が膨らんでいないためと思います。



重さを測ってみた結果、Aが2,734g(+68g)、Bが2,008g(+16g)と2枚とも最初に測った時よりも重たくなっていました。これは、水分を含んだことが原因と考えられるため、ふとんはまだ完全には乾いていないということがわかります。
羽毛ふとん用の生地は、羽毛の吹き出しを防ぐために高密度に織られていて、さらにダウンプルーフ加工でより隙間を小さくしています。よって、水を吸収する力や、乾燥させる力は通常の生地よりも劣ります。

そのため、コインランドリーの乾燥機だけでは完全に乾かすことは難しいのではと感じました。

触ってみると表面は乾いているため仕上がったと感じられるかもしれませんがあくまで表面だけ。内側はまだ湿っている可能性がありますので、持ち帰ったら天日干しすることが絶対条件となります。

内側が湿っている状態の場合は…羽毛の臭いが発生する恐れがあることと、湿った羽毛が中でピリングになりカサが無くなってしまう可能性もあります。使用するためにふとんを出したら前と全然違っている…!!?なんてことがあるかもしれないので、この点はコインランドリーをする時に注意する点と言えます。



しっかりと干してからもう一度カサをチェックしてみると…2枚とも空気を含んでかなりよく膨らんでいます。生地の軽いBのほうがよく空気を含みふっくらしているように見えます。気になる乾き具合ですが、Aは外側は乾いていますがまだ中は湿気ていて完全に乾いたとは言えない状態です。Bのほうは外側も中もほとんど乾いていましたが、まだもう少し乾燥させる必要があるとという状態でした。Bは品質表示に【洗濯可】の表示があったので乾きやすいことが分かります。Aがまだ完全に乾いていなかったのでその後さらに2日間天日干しにして2枚とも乾燥が完了しました。

今回ふとんが乾くまで計3日間かかりました。A、Bそれぞれのふとんの重量を量ってみたところ、なんと実験前よりも軽くなっていました。実験前はどちらのふとんも押入れに入れていたため湿気を含み、カサも出ていない状態でしたが、今回完全に乾いたことで中の空気が入れ替わり湿気を取り除いてくれたようです。

カサも並べてみるとA、Bどちらも約40cmまで戻りました。もともと乾かすことが目的でしたが、天日干しをすることでふとんの中の空気を入れ替えることができてボリュームアップしたため、普段のお手入れで天日干しを行う、行わないで羽毛の劣化度合が大きく左右されることになります。


中身の確認

では気になる中身はどうなったのでしょうか?コインランドリーで洗った後、中身の羽毛に変化があったのかを見ていきます。
 

いかがでしたか?以上がコインランドリーで羽毛ふとんを洗った実験のレポートです!
やはり『TTCの生地』で『洗える表示』のあるふとんは洗濯しやすく、逆に綿素材のものは十分に乾燥させるまで時間がかかり、洗いにくかったです。今回の実験で感じたことは…

 

◆ 生地によって洗いやすさが違うこと。
◆ ダウンに密度がある羽毛(品質のいい羽毛)ほど、洗濯機・乾燥機の使用でピリングができやすくなり、カサが無くなる傾向にある。
◆ 今回2枚一緒に洗ったため洗濯乾燥中にふとん同士がぶつかり合い、中の羽毛が固まりやすくなった。複数枚一緒に洗うとピリングができやすくなる可能性がある。
◆ドラム缶の中で回転しているため羽毛が移動してしまう。移動してしまったら一番暖かくしたい身体部分の羽毛が少なくなってしまうため、洗濯して綺麗にしても羽毛ふとんの本来の役割を果たせない。
 

コインランドリーで確かに洗えましたが、現状の羽毛ふとんよりも良くなったかという視点から考えると羽毛の移動やピリングが発生する可能性があることから洗いやすいふとんと洗いにくいふとんを見極めて洗濯を行わなければもったいないと感じました。

以上、コインランドリーで羽毛ふとんを洗ってみたレポートでした!