先日、取引先の寝具専門店さんから問い合わせがあった内容をご紹介します。

こちらのお店は、綿の打ち直しをメインにしているお布団屋さんですが、お客様から羽毛リフォームの為に預かったふとんについての問い合わせでした。

以下、お布団屋さんと当社のやり取り ⇩⇩

お布団屋さん 「預かったふとんの中身がアイダーダウン(※1)と書いてあるけど、おたくでも出来るんか?」

当社 「ハイ、出来ますよ!しかし、仕立代は一般のモノより高くなります。」

お布団屋さん 「そうなんか。ダウンも100%と書いているけど、足し羽毛は何を使えばええんかな。」

当社 「アイダーダウンであれば、やはりアイダーをおススメしますが大分高くなります。」

お布団屋さん 「そうなんや。どうしよう。そんなに高くなったら困るな。どうしたらええ?」

当社 「そうですね。もう一度品質表示に書いてある内容を教えてください。」

お布団屋さん 「えーとな、シルバーアイダーと書いてあって、ダウン率は100%になってるで。メーカーは〇〇〇〇やから間違いないと思うけど.....。」

当社 「(えっ..!?アイダーの羽毛にわざわざシルバーと書くことはおかしいな...。もしかしてアイダー擬きでは無いのか??)」

当社 「まー、取り敢えず送ってきて下さい。現物を見てからどの様なリフォームをすれば良いかを連絡させていただきます。」



後日、送られてきたふとんを見ると確かに”シルバーアイダーダウン ダウン率100%”と記載されていました。





そして、中の羽毛を取り出してみるとアイダーダウンではなくシルバーグースの手選別の様な羽毛です。
この羽毛の品質は一般的な羽毛の中では上級品であるとは思いますが、アイダーダウンという特別な羽毛とは全く違うので、‘‘シルバーアイダー”の記載は間違っています。





ちなみにダウン率100%も許容誤差がありほぼありえないので、そこも怪しいポイントです。

この表記はご購入される方に対して間違った情報を与えていることになります。
同じ業界人として非常に残念に思います。

毎年、アイダーダウンではないのに、まるでアイダーダウンであるかの様な羽毛ふとんのリフォームが何枚かあります。
それだけ、この様ないかがわしい商品が出回っているという事でしょう。

ではなぜこんな事がいつまでも続くのか、それは中身が見えないから品質表示やふとんに付いている下げ札でしか確認が出来ないからだと考えております。

羽毛ふとんの生産者や販売者の中には正しいルールに基づき商品情報を発信している所も多くありますが、中には販売するために都合の良い情報に変えて商品情報を発信している所も少なくはないと思います。

この都合の良い情報を発信している所の特徴は、商品に対しての知識や見聞が少ない方が多いように思います。

当社は羽毛ふとん製造販売者として、日々羽毛に対する知識を深めて羽毛の専門家であり続ける活動をしております。

今回の件については、取引先のお布団屋さんには「これはアイダーダウンではないので、通常の価格帯で見積もりをさせていただきます。」とお伝えさせていただきました。




※1 アイダーダウンとは北極圏に生息しているアイダーダック(ケワタガモ)で野生の海鳥です。
そのアイダーダックが5月末から6月中旬に繁殖のため、母鳥のダウンで巣を作ります。
巣の中で暖められた卵が孵化し、巣立った後の巣から採取した羽毛がアイダーダウンです。
一つの巣から20gしか取れず、希少性が高いです。
生息地として有名な地域はアイスランドです。